第1話 『峠の会』
耳馴れぬ『峠の会』とは、KLA(Keio Ladies Association)の中の三人(村尾・山口・森本)が新たに同好会の一つとして、本年六月に発足させたグループの名称である。
第一回は、我が家の近く西田公園の中にある万葉植物園に於いて、夫、森本浩(元武田薬品研究所長を経て、神戸学院大学教授、現在無職)をボランティア的ゲストスピーカーとして、「万葉集の植物の薬用について」と題する極めて気楽な話をして貰い、昼食後苑内の見学を行った。
第二回は、八月二十九日、西宮の酒蔵通にある「日本盛煉瓦館」に於いて、「峠の会」命名のきっかけとなった漱石の「草枕」を古典再読という形で出席者に読んできて貰い、感想を述べ合ったのである。
明治三十九年に発表した「草枕」は漱石の初期の作品で、短篇としておよそ二週間位で書き上げたと言われている。
特に「草枕」は現代に至る迄、作中の文章が多くの有名な作家、評論家によって引用され、一般に普及している。
「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。」
の冒頭の文句、画家として旅に出た主人公が足下に雲雀の声を聞き、シェリーの詩を思い出し暗誦し、のちに一服する「峠の茶屋」は芳野鳥越の峠であった。
「漱石が名づける非人情の境地は、西洋芸術より出世間的な詩味を大切にする東洋芸術により多く含まれているという主張に注目してみる必要がある」と伊藤整氏が、近代文学鑑賞講座で述べているように、東洋の詩味にも通じた作品は、人間理解の一つとして、「峠の会」命名の動機ともなった。
次回三回目は、村尾会員の御夫君、村尾澤夫氏(大阪府立大学名誉教授)に登場していただき、農芸化学、バイオの専門分野のご研究を素人にも分かりやすく面白い解説をお願いすることになった。
二〇〇二年十一月二十五日(月)午前十一時から午後二時迄、ノボテル甲子園(元甲子園都ホテル)にて開催の予定。
「峠の会」では小規模なりに、ぼつぼつKLA以外のビジターに呼びかけて、ご来場を願う声が大きい。
ここで、当倶楽部会員でもある多田智満子さん(昭二十九文)から、「峠の会」に俳句を寄せて戴いたのでご紹介したい。
青葉してよき茶屋ありし峠かな
湧き水の清きを汲まむ峠道
山笑ひ老いの足どり重からず
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